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第148回 山紫水明の都が生み出す 京の借景

 
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今回のいっぴんは「京の借景」!
平安時代に京の都が置かれてから、数々の庭園が寺院、宮廷、茶室などとともに造られてきました。観光客で賑わう嵐山の渡月橋近くにある天龍寺。天龍寺の庭園は曹源池という池を中心にした池泉廻遊式庭園で、さまざまな出島が突き出し、池の複雑な形が方丈からみたときの奥行きを生み出しています。その左奥を見上げると、嵐山を望むことができ、右奥には小倉山、愛宕山などを見ることができます。それらの山々は天龍寺の庭と一体となり、無限の広がりを感じさせてくれます。これが庭の周囲にある自然の景色を借りる「借景」という技法です。京都は北山、東山、西山と三方を美しい山並みに囲まれ、それらの豊な自然景観を用いた、借景庭園がいくつも存在しているのです。

京都市北区の正伝寺。こちらは借景庭園の代表的なお寺です。白砂を敷き詰めた枯山水庭園で、庭園の奥には見事な比叡山の借景を望むことができます。白砂と緑の刈り込みがなす、美しい色彩。方丈前の広い空間とその奥にみえる比叡山の秀麗な姿は見事です。

明治時代、庭園文化の中心として発展してきた京都に現れた一人の庭師がいます。7代目小川治兵衛。近代日本庭園史に名を残す傑作を残した人物です。無鄰菴は明治29年に造られ、庭園の奥には雄大な東山の山並みを見ることができます。それまでの日本庭園にはなかった独自のイメージを新しい庭として形にした無鄰菴は、新たな借景のあり方を人々に強烈に印象づけたのでした。
また、京都は周囲を美しい山々に囲まれていることから、市内のさまざまな場所から借景のようにその山の姿を見ることができます。京都府立植物園のバラ園からはバラの咲き誇る庭園のその奥に比叡山の姿を見ることができます。日本庭園の借景とは一味違った魅力を感じることができるのです。


■お店情報

天龍寺
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町68
075-881-1235

正伝寺
北区西賀茂北鎮守庵町72
075-491-3259

無鄰菴
京都市左京区南禅寺草川町31番地

京都府立植物園
京都市左京区下鴨半木町
075-701-0141

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