一木一草に心こめ庭づくり
『あいあいAI京都』 2008年7月16日号 (朝日新聞 大阪本社)
一木一草に心こめ庭づくり
地球から緑が大量に失われている。
「ただぼーっと心癒やされる、あくびの出る庭でいいんです。そして一地球人として自然の素晴らしさを感じてほしい」と、「京都発、心の議定書」を掲げる。江戸時代から250年以上続く造園「植治」。
7代目が1909年に作庭したあと、管理が他人の手に移っていた左京区の洛翠庭園を、2002年に復元。琵琶湖を模した池、狭い間隔で配置された飛び石、足元には水鏡の空、風にざわめく木々の向こうに連なる東山がよみがえった。「借景にあらず、山や空が白然と庭に参加してくる『借庭』が植治の庭です」
2歳のとき父が戦病死した。3人の子を抱えながら当主を務め、植治を守っていた母・君子に、120色のパステルを買ってもらい、豆画伯は育った。「今でも大事に持ってます」。
京都市立美術大学(現・同市立芸術大学)日本画科で、上村松篁(しょうこう)先生らに絵画を学び、「新制作日本画本展」および「京展」に入選。しかし、病気がちの兄を思い、絵の道を断念。「以後10年は美術館前を通るのも嫌でした」と懐かしむ。
23歳のとき、7代目33回忌で母から初めて聞かされた7代目最期の言葉「京都を昔の山紫水明の都にかえさねば」を肝に命じ、造園に従事。琵琶湖疏水から池に引く水を炭で浄化し、土も有機肥料を中心に施した。こうして自然本来の力が発揮できる庭づくりに徹した。かつて7代目は、足元の小さな虫や雑草一つに至るまで尊い命があることを念頭に庭作りに励んだという。「一木一草を大切にする心」。それこそが、植治流の真髄だ。
「いま、緑を失った分、人の心も失われている」。「井の中のかわず」に徹し、京都を拠点にしての作庭活動だったが、「鎖国もそろそろ解かんとね」と、講演活動や造園指導にも当たっている。
長男や若いスタッフと春夏秋冬「植治の21世紀の庭づくり」に精魂を込める。
命題は、「癒やしの庭、自然回帰の庭づくり」。
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《洛翠庭園にて》
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