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温故知新  庭に教えられる
『ALSUR』  2002年春号  (ニコスカード)

温故知新  庭に教えられる
自然。人は自然に憧れを抱きます。自然から恩恵も受け受けます。
お庭。人はお庭に自然の面影を求めます。お庭の中で憧れの象徴を表現しようと試みます。
世界には多様なお庭があります。それぞれの国、ぞれぞれの地域、それぞれの人。それぞれの自然への憧れがお庭の中で表現されます。
日本においても例外ではありません。日本庭園或いは和風庭園という括りは極めて大雑把で曖昧なものではあります。ですが思い描く理想の自然、憧れる自然は日本のお庭の中において強く表現されています。オリジナリティーに溢れています。

自然の象徴の表現。お庭においては自然からの産物をそのまま素材として用いる事もしばしばです。樹木然り、石然り。
特に石。たとえ一握りの大きさの石でもその構成に費やされた時間は途方もないものです。そこにはエネルギーが凝縮されています。
その様な石をお庭において用いる際、二通りの手法を取る事となります。燈籠の様に石に手を加える場合。若しくは自然から産み出されたままの姿で石を用いる場合。
前者は表現に幅を与えてくれます。後者は一般に自然石と称されています。この自然石一つとってみても、実に多様な顔を持ち合わせています。「穏やかな顔、険しい顔、のっぺりした顔」。
巨大な岩も小さな砂利も表情は豊かです。これらの顔を如何に素敵に引き立てる事が出来るか。これが憧れる自然を表現する事へと繋がるのです。

自然石。お庭においてこの自然石を据える際、ます石自体に慶んで貰わねばなりません。石が微笑み、お庭が微笑んでいるならば、それを目にした人も微笑んでしまいます。 その様な自然石を用いた表現の特徴的なものに三尊石というものがあります。築山や滝組みの頂上に見受けられます。
三尊石。中央奥にはやや大きめの石を縦長に立てて据え、その手前の左右それぞれに石を据えます。
三つの石は庭を守護する仏様を見立てています。概念上からも意味合いの深いものです。
しかしながらその実際も実に優れています。意匠性、機能性、双方に長けたものです。三尊石はランドマークとなるものであり、お庭を構成する上で主役を担う一つとなります。
また滝組みにおいて用いられた際、三尊石の偉大さには敬服させられる事となります。中央奥の石の脇に水の取り入れ口を設けるのですが、手前に据えられた二つの石によって取り入れ口はカモフラージュされる事となります。深山より清水が湧き出している様を表現出来る訳です。
加えて手前の二つの石は水の流れに躍動感を与えます。左に右に水を流し、そして水を落とします。三尊石を据える事により、僅かな空間の中においても遠近を表現出来ます。
とても趣のあるフォルムであり、とても理に叶ったシステムです。
現代においても尚、先人達の知恵は輝きを放っています。

お庭は自然への憧れを追い求めたものです。様々な憧れがあり、様々なお庭があり、様々な表現があります。三尊石の様に、日本のお庭にも素敵な表現が沢山あります。

お庭や石に憧れを重ねてみて下さい。お庭や石に語り掛けてみて下さい。
お庭や石はきっと私達に微笑み掛けてくれます。きっと私達に沢山の慶びを教えてくれます。

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